欲しいものをちゃんと買いたい、大学に行きたい、お母さんの揚げ物が食べたい

シャンプーもコンディショナーもトリートメントも全部同じタイミングでなくなりそうで、新しいものを買わなきゃと思ってドラッグストアに行った。前から気になっていたブランドがあって、香り見本がすごくいい香りだったのでそれが買いたいなとわくわくしていた。値段は分からなかったけれど、生活に必要なものだし前から欲しかったので買っちゃおうという気分だった。15%オフのクーポンも持っていて強気な気持ちだった。

いざドラッグストアに着いてシャンプーの並ぶ棚の前に立ち、買おうと思っていたメーカーの商品の値段を確かめると、490mlで1400円。案外するんだな、でもシャンプーの値段ってこんなもんだっけ、と思いながら、ちなみに今まで使ってたものはいくらなんだっけ、とこれまでずっと使い続けてきたメーカーのものを見てみると、同じ容量で800円くらいだった。半額ちょいくらい。半額ちょい、と考えるともうダメだった。お金がないから、高めのシャンプーを買うよりもまず節約をするべきなんだった。差額の600円で買えるであろういろんなものが頭に浮かぶ。600円あれば、スーパーで野菜が数種類買える。600円あれば、よく料理に使う1/2カットのかぼちゃと3本入りの茄子、トマトのパックくらいは買える。見切り品コーナーに時々ある80円のほうれん草も。

結局のところ、600円で買える野菜が買いたかったシャンプーに買ってしまったのでシャンプーは買わずに帰ってきた。コンディショナーとトリートメントも。私はこういうふうになりがちだ。なにかを買おうと思ってお店に行っても、それを本当に買う必要があるのか、買わなくても生活できるんじゃないか、もっと節約できる買い物の仕方をするべきなんじゃないかと考え始めてしまって、買い物に行く前はわくわくしていたのに結局何も買えずに家に帰ることになる。お金に対する危機意識というか、お金がなくなったときのことがすごく不安になってしまうときがあって、買い物ができなくなってしまう。良くも悪くもではあるけど、通販の方が買い物はしやすい。通販だとカード払いで、現金が自分のもとから消えていく感覚が薄いからかな。

自分の欲しかった高めのシャンプーを買うことは諦めたとはいえ、シャンプーの在庫がないことにはかわりないので、結局またドラッグストアに行かなくちゃいけない。15%オフのクーポンの有効期限が2日後までだし。5%オフのクーポンも持っているけれど、併用はできないから結局数日に分けてすべてのクーポンを使えるようにちまちま買い物をするしかない。

あのシャンプー欲しかったな。きれいで優しい大人のひとが使ってそうな香りがした。私は大人じゃないからそういうシャンプーを買えないのも仕方がないし、今使っているものに特に不満がある訳でもないんだけど、どうしても新しいものに興味が向いてしまうし本当にいい香りだった。あれを買って使えたらわくわくして楽しい気持ちになったんだろうなという感じ。

何十万もするものを買えるようになりたいとはあまり思わないけど、今回諦めたシャンプーみたいなちょっとしたものをちゃんと買えるようになりたい。買い物をするとき、大体数ある選択肢の中から最安値のものを選んで買う生活なので、そこで最安値のものを選ばなくてもいい生活ができるようになりたい。なんでも高ければいいという訳でもないし安くて質がいいものも(ありがたいことに)たくさんあるけど、それでもやっぱり高いものにはそれだけのお金を払う価値があると思う瞬間もたくさんある。帰省したときに親が買ってくれるケーキ屋さんのケーキとか、ハーゲンダッツとか、ちょっと奮発して新調した敷き毛布とか。おじいちゃんが夏になると送ってくれる木箱に入った素麺とか。食べ物が好きだから食べ物の思い出ばかりだけど、ちょっと高いからこのおいしさなんだな、このおいしさはやっぱり最低価格じゃ出せないんだな、と思うことはたくさんあったし、そういうものこそが生活を豊かにしてくれるような気がする。

でも学生である以上なかなかそういう生活は手に入らなくて、バイトをするしかないんだけど、コロナ禍が始まって以来シフトが全然入らなくなってしまった。3月末に定期研修に出て以来一度もバイト先に行ってない。大学に入ってからずっと今のバイト先でお世話になってきたし、職員さんたちもいい人ばかりだし、何より仕事を気に入っているのでできれば卒業までずっと働きたいと思っていたけど、ちょっと厳しい状況になってきてしまった。院試が終わったら新しいバイト先を探そうかな。でも正直バイトの面接を受けるのが気が重い。今の塾講師のバイトは仕事内容のわりに服装規定が緩くて、華美でなければ髪を染めていてもパーマをかけていてもピアスを開けていてもいいしスーツを着なくてもいいけれど、大体どこの塾も髪は黒、スーツ着用でピアスはなし、というところが多い印象がある。勉強を教える仕事でピアスをつけていたらダメ、というのは分かるようでいまいちよく分からない。スーツにこだわるのも、髪色にこだわるのもよく分からない。勤務中に座っていられるというのはプラスポイントだけど。前に派遣の仕事で接客をしていたときは毎日6-7時間ずっと立っていないといけなくて本当に脚がしんどかった。めちゃくちゃむくむし。ピアスも厳禁だったから毎日5つのピアスをつけたり外したりしないといけなくて面倒だったな。接客はもう全然、からっきし、本当に向いていないと分かったので品出しのバイトとかしたい。それか大学構内でできるバイトもいいかな。

なんにせよ3ヵ月近く無職無収入なので働かないと生活が厳しくなるけど、院試が終わる9月までは無理かなとも思う。マルチタスクができないし、もし院試に落ちたらバイトのせいにしてずっとうじうじ後悔しそうで、そうなりたくないので院試終了までは勉強に集中した方がよさそうだ。集中とか言ってみたけど、最近全然勉強を頑張れなくて本当にまずい。勉強が頑張れない自分に半分見切りをつけているというか仕方がないよね、みたいな気持ちになっているのがさらにまずい。こういうとき大学にいけたらな。自分のアパート以外でなおかつお金を払わずに勉強できる場所があればいいんだけど。3ヵ月ずっと自粛の毎日で自分の狭いアパートの中で勉強し続けることに限界を感じてる。田舎だから、ネットが使えるカフェとかファミレスとかが近所にある訳じゃないので、自分の家以外で勉強ができる場所を探すのが本当に難しい。

大学生活は概して全然うまくいかなくてずっと居心地が悪いなと思ってきたので、こういうことを思うことが自分でも意外だけど、大学にいければなと本当に思う。一年休学したから同級生はみんな卒業してもう大学にはいないけど、知り合いがひとりもいないからこそ逆に学校という場にいやすそうな気がする。前よりも居心地よく過ごせるような気がする。普段通りに大学が始まったら始まったで朝起きるのが嫌だとか通学が面倒だとか、大学に行きたくない気分にまたなるのかもしれない(というか多分そうなる)と思うけど、今は自分の家以外の勉強場所が欲しくて、大学に行きたいなとよく思う。先生に気軽に会いに行ける環境も必要だし。

コロナ禍が終わったら(終わりなんていつ来るのか分からないけど)大学に行って、ひとりで勉強したり、大学附属病院のローソンまで出かけて行って昼ごはんを買ったりしたい。うちの大学は校章がイチョウで、構内にも何本もイチョウの木が植わっていて秋になるとどこを見ても黄色、というくらい葉の色付きがきれいなので、それが見たいな。イチョウに限らず、いろんな木がたくさん植わっていてそれが好き。お隣の県に引っ越してきた友達にも会いたい。今年の夏は帰省できるんだろうか。実家に帰ってお母さんにハーゲンダッツを買ってもらいたいし一緒にてんぷらを揚げたい。夜に冷房のきいたリビングで仕事をしているお母さんの隣でTSUTAYAで借りてきたDVDを観ながら猫たちをなでたい。あ~お母さんとてんぷらを揚げたすぎるな。うちの家は揚げ物をつくるときは決まって夕飯で、いろんな揚げ物を大量に揚げるので大抵だれもお米を食べない。自炊は節約になるし料理は純粋に楽しいけど、自分一人のためだけに揚げ物を作ろうという気持ちにはならないし、自分の作る料理はたとえ初めてであっても大体こんな味になるんだろうなという予測がついてしまうので、わくわく感とか目新しさとかそういうものがない。お母さんの料理も20数年食べてきたから味は分かるけど、でも一生飽きることはないと思う。帰省してもお母さんの料理が毎食食べられるわけではなくて、むしろ帰省しているときは夕飯を作るのは私なんだけど、それでもお母さんがぱぱっと作ってくれる料理はなんだっておいしい。自分のためだけに3食作り続ける生活ももう3ヵ月だから自分の料理に本当に飽きてきちゃった。今年の夏ちゃんと実家に帰れますように。